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皆さん、こんにちは。
元・海外FX取引所日本チーム責任者のサクライと申します。
2022年11月9日に、暗号資産(仮想通貨)取引所の最大手であるBinanceが、同じく大手取引所のFTXを買収するとの衝撃のニュースが飛び込んできました。
今回のニュースを受けて、ビットコインを始めとする暗号資産は軒並み価格が下落しており、暗号資産界隈に大きな影響を及ぼしています。
しかし、翌日にはBinanceがFTXを買収できなかったとの報道も出ており、今後の展開については予測が困難な状態が続いています。
今回はTwitter上の口コミやニュースの内容から、現在の状況についてまとめます。
2022年11月21日追記
BinanceとFTXの概要
Binanceは2017年に香港で設立された暗号資産(仮想通貨)取引所で、現在では業界最大手になるまで成長を遂げています。
対してFTXはかつて世界で2番目の取引高を誇った海外の取引所であり、流動性に優れた取引所として知られています。
2022年6月には、日本の法律や日本語に対応した取引所「FTX Japan」を展開するなど、日本国内でも徐々に利用者を増やしていました。
それぞれの取引所の共通点として、取引所側で発行されているトークン(Binanceの場合はBNB、FTXの場合はFTT)があり、取引手数料の軽減など様々な恩恵を受けることができます。
それらのトークンは、取引所の発展により取引価格の上昇を期待することができますが、逆にその取引所で悪いニュースなどが出てしまうと価格が暴落するリスクもあります。
FTXの子会社Alamedaについて
FTXには子会社にAlamedaがあり、こちらも今回のトラブルに関わっています。
Sam Bankman-Fried氏はアフロヘアーが特徴的なFTXのCEOであり、2017年にクオンツトレーディング会社のAlameda Research、2019年にFTXを立ち上げています。
同社の文書によると、Alamedaは6月30日時点で約146億ドルの資産を有しており、そのうち58.2億ドルがFTXのネイティブトークンであるFTTでした。
更には負債の一部もFTTで構成されており、歪なバランスシートであることが分かります。
かつてBinanceはFTXを支援していたが…
数年前までBinanceはFTTトークンを購入し、同業他社のライバルでありながらもFTXを支援していました。
CZは、運良く最大の仮想通貨取引所を築いたわけではなく、非常に頭の良い人です。
だからこそ、彼は2019年にバイナンスがFTXに投資するという戦略的な決断をしたのです。
また、FTXがBinanceのエコシステムのために機関投資家向けの商品提供を構築することも発表されました。
5/N
— SOU⚡️全財産ビットコイン (@SOU_BTC) November 8, 2022
しかしながら、2022年11月7日にはBinanceのCEOであるCZ氏が21億米ドル相当にも及ぶFTTを売却することを発表しており、こちらが今回のトラブルの中心となっています。
As part of Binance’s exit from FTX equity last year, Binance received roughly $2.1 billion USD equivalent in cash (BUSD and FTT). Due to recent revelations that have came to light, we have decided to liquidate any remaining FTT on our books. 1/4
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) November 6, 2022
FTXがBinanceへ救済を求める
2022年11月8日には、CZ氏がBinance側でFTXを買収する意向を示しました。
同氏のツイートによると、FTXからBinanceに対し流動性が著しく低下に際して協力の要請があり、BinanceがFTXを買収することで流動性低下の危機から救おうとしたとされています。
また、この時点でFTXは買収準備に伴い法定通貨以外の出金を全て停止しました。
This afternoon, FTX asked for our help. There is a significant liquidity crunch. To protect users, we signed a non-binding LOI, intending to fully acquire https://t.co/BGtFlCmLXB and help cover the liquidity crunch. We will be conducting a full DD in the coming days.
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) November 8, 2022
この度の騒動を受け日本の財務省は、FTX Japanへ2022年の11月10日から12月9日までの間、交換業に関する業務を停止するよう行政処分を行っています。
出典元:https://coinpost.jp/?p=406481
一転してBinanceの買収が頓挫
Binanceが買収を正式に発表し、FTXを救済することで一旦は事態が徐々に収束するものと思われました。
しかしながら、2022年11月10日には、BinanceがTwitter公式アカウントよりFTXを買収できなかったとツイートしており、今後の展開については引き続き予測が困難な状態となっています。
As a result of corporate due diligence, as well as the latest news reports regarding mishandled customer funds and alleged US agency investigations, we have decided that we will not pursue the potential acquisition of https://t.co/FQ3MIG381f.
— Binance (@binance) November 9, 2022
買収ができなかった理由として、デューデリジェンス(買収対象の財務情報等を入手し、調査すること)や米国政府機関による調査の結果、自社の支援能力を超えていると述べており、CZ氏が予想していたよりもFTXが深刻な状況に陥っていたことが分かります。
In the spirit of transparency, might as well share the actual note, sent to all Binance team globally a few hours ago.https://t.co/IUNkPcLC8T pic.twitter.com/XGlIJB7EV5
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) November 9, 2022
FTXの資金について
この騒動に追い打ちをかけるように、FXTはハッキングの被害を受け資金を失った旨をTelegramの公式アカウントより公表しました。
FTX just released this message on their Telegram channel.
It looks like they are claiming it is a hack and the FTX wallets are being looted tonight.
There is a bankruptcy freeze in place. The bankruptcy trustee says he is not involved in what is happening tonight. pic.twitter.com/VjVNfHL91p
— Wall Street Silver (@WallStreetSilv) November 12, 2022
更には、FTXの資金のみならず、ウェブサイト、モバイルアプリもハッキングされているとの報道もされています。
記事によると、FTXモバイルアプリとウェブサイトがハッキングされ、マルウェアやトロイの木馬ウイルスをデバイスにダウンロードされてしまう可能性があるとのことです。
FTX claims it has been hacked of all of its funds, website and mobile app compromisedhttps://t.co/dOq8lb8vS0
— The Block (@TheBlock__) November 12, 2022
自分の身を守るためにも、騒動が完全に沈静化するまではFTX公式のウェブサイトへのアクセスを控え、モバイルアプリをインストールしてしまっている場合はアンインストールしておきましょう。
この度の騒動で損失を受けた投資家等が、FXTの広告塔に起用された大谷選手や大坂なおみ選手を含めて起訴
FTXとその有名な支持者の多くに対して、2022年11月16日に投資家等にて集団起訴が行われました。
【続報】FTX広告塔の大谷翔平さん&大坂なおみさん、訴えられるhttps://t.co/LlVFt0ZjG3
破綻で損害を受けた投資家らが「同社の宣伝に関わった有名人にも賠償責任がある」と大谷翔平/大坂なおみ/ステフィンカリー/シャキールオニール等を提訴。賠償請求額は不明だが、訴状では”1.5兆円の損害”と主張。— 滝沢ガレソ⭐ (@takigare3) November 17, 2022
その内容は、破産した暗号交換がフロリダの法律に違反し、顧客に代わって110億ドルの損害賠償を要求しているというものです。
オクラホマ在住の集団訴訟の代表弁護士であるアダム・モスコウィッツ氏は、FTXの創設者で元CEOのサム・バンクマン・フリードは、顧客の資金を不適切に取引する「大規模な詐欺」を画策したと述べました。
被告は広告塔に起用された多くの有名人にも及んでおり、トム・ブレイディ、ジゼル・ブンチェン、ステフィン・カリー、ゴールデンステート・ウォリアーズ、シャキール・オニール、ウドニス・ハスレム、デビッド・オルティス、ウィリアム・トレヴァー・ローレンス、大谷翔平、大坂なおみ、ローレンス・ジーン・デビッド、ケビン・オレアリーが含まれます。
FTX JAPANの状況について
FTX JAPANで取引していた日本人ユーザーの資金はどうなるのでしょうか。
こちらは日本の法律に則りFTX本体とは別で資金を管理しており、法定通貨は信託口座に預託、暗号資産は自社が管理するコールドウォレットに保管していると公表しています。
財務省の業務停止命令に対してもすぐに業務改善計画を提出し、ユーザーの資金保護と状況改善に向けて取り組んでいることが伺えます。
「業務改善計画の提出に関するお知らせ」を掲載致しました。
こちらをご確認ください。https://t.co/kMapUg9Dex— FTX Japan (@FTX_JP) November 16, 2022
なお、2022年11月20日には本体のFTXが資産の売却手続きを開始したと発表しており、日本法人のFTX JAPANも売却の対象となるとの見通しです。
経営破綻したFTXが資産売却手続きを開始したと発表しました。日本法人や欧州法人などが対象となる見通しで、具体的な対象は今後数週間で詰めます。優良事業を現金化し、債権者への弁済に充てる狙いです。https://t.co/4BnUFkLxsN
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) November 20, 2022
実際にFTX JAPANを利用していたユーザーの資金はいつ戻ってくるか、どの程度戻るか不透明な状況となっています。
買収騒動後のトークン状況について
2022年11月10日現在、BNBとFTTの価格推移は以下のとおりです。
BNBの価格と取引高推移
BNB価格: ¥41,164.16
価格推移: 24時間/-¥5,400.65/▼11.60%
24H最低/24H最高: ¥38,243.89/¥46,777.73
取引高: 24時間/¥454,651,626,960.60/▼39.26%
FTTの価格と取引高推移
FTX Token価格: ¥387.27
価格推移: 24時間/-¥354.60/▼47.80%
24H最低/24H最高: ¥300.55/¥744.58
取引高: 24時間/¥158,629,557,510.28/▼66.70%
出典元: https://coinmarketcap.com/ja/
FTTについては既に八方塞がりの状況であるため暴落していますが、BNBについても価格と取引高が大きく落ち込んでいます。
BinanceがFTXを買収できなかったこと、そして他の暗号資産取引所もFTXと同様の状況に追い込まれる可能性があるという危機感から、取引所自体が厳しい視線に晒され、Binanceも痛手を負っているのではないでしょうか。
主要な暗号資産の価格状況について
今回の件については、仮想通貨業界に大きな影響を与えました。
2022年11月10日現在、BTCとETHの価格推移は以下のとおりです。
BTCの価格と取引高推移
Bitcoin価格: ¥2,443,213.55
価格推移: 24時間/-¥234,848.63/▼8.77%
24H最低/24H最高: ¥2,292,574.45/¥2,683,877.97
取引高: 24時間/¥15,892,572,221,527.56/▼2.48%
ETHの価格と取引高推移
Ethereum価格: ¥172,479.22
価格推移: 24時間/-¥17,049.00/▼9.00%
24H最低/24H最高: ¥158,360.12/¥189,887.42
取引高: 24時間/¥5,869,063,063,472.68/▲0.48%
出典元: https://coinmarketcap.com/ja/
いずれの通貨も下落しており、特にBTCは年初来安値を記録しているため、この度の騒動が暗号資産全体へ影響を及ぼしていることが分かります。
出金元: https://jp.cointelegraph.com/news/bitbanks-market-analysis-2022-1109
次世代の分散型取引所(DEX)について
今回の買収騒動は資金繰りに失敗したFTX/Alameda、そしてに自社だけリクスを回避しようと大量のトークンを売り出したBinanceよって引き起こされました。
いずれも中央集権取引所(CEX)であり、今後も取引所の行動によって同様の事態が発生する可能性があります。
今回はより中央集権感が鮮明です。
子会社でハイリスク運用していたFTXもクソですが、自分の権益のために仮想通貨市場ごと競合を潰そうとしたBinanceはもっとクソです。
こうした一部の人間の政りごとに振り回されるのは勘弁してほしい。
僕らが欲しかった仮想通貨ってこういうものでしたっけ?
— 全財産イーサリアム🐼仮想通貨市場解説💁♂️ (@nook_ethereum) November 9, 2022
本来は、国や金融機関といった中央集権機関に依存しないものとして仮想通貨が生まれており、その思想が反映された取引所が分散型取引所(DEX)です。
分散型取引所のdYdXでも、FTXやBinanceと同様に取引所トークンが発行されています。
2022年11月10日現在、dYdXトークンの価格推移は以下のとおりです。
dYdXトークンの価格と取引高推移
dYdX価格: ¥223.46
価格推移: 24時間/+¥21.82/▲10.82%
24H最低/24H最高: ¥177.25/¥237.50
取引高: 24時間/¥35,635,340,226.63/▲36.83%
中央集権取引所の騒動を受けて、dYdXトークンは他の暗号資産や取引所トークンと比較して大幅に価格と取引高を上げています。
まとめ: 今回の事件によって、DEX(分散型取引所)への移行が進むか?
BinanceによるFTX買収騒動は、暗号資産業界に大きな影響を及ぼしました。
将来的に今回の事件を振り返ったときに、歴史に残るものとなっている可能性がございます。
暗号資産はまだまだ不安定な状況であるということを改めて認識するとともに、CEX(中央集権型取引所)の危険性を感じさせるものでした。